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Bologneseボロニーズの犬種的傾向と健全性
ボロニーズの犬種的傾向と健全性
ボロニーズは、Bichon(ビション)系列の犬で、Bichon Bolognese(ビションボロニーズ)、Bichon Frise(ビションフリーゼ)、Bichon Havanese(ビションハバニーズ)、Bichon Maltese(ビションマルチーズ)のうちの一種類にあたります。
歴史についての項目に書いてあるように、戦争によって、繁殖地のヨーロッパが多大な被害を受け、ボロニーズは絶滅の危機に瀕してしまいました。残った一握りのボロニーズで、なんとかしてボロニーズを絶滅の危機から救おうと努力した方々がありました。しかし、そこでは数少ないボロニーズということで、近い血統での交配を行わざるをえない状況でありました。そのため、血統上の近さから生じる先天性疾患という、リスクが稀少犬ボロニーズにはあります。
また、世界的な傾向を見ても、ボロニーズのブリーディングの歴史は、どんどん変化を遂げており、日本にボロニーズが初めて輸入された約20年前から現在に至るまでも、ブリーディングの傾向は、変わりつつあります。
ひとつは、FCIスタンダード規格のサイズにボロニーズを近づけようとする努力が先行したため、健全性におけるリスクも増えてきたと、一方では言えるのです。
このようにボロニーズは、犬種的傾向として健全性についてのリスクがあると言えます。
一方、日本におけるボロニーズの犬種的傾向も世界における例外ではありません。約20年前、ボロニーズが海外から輸入されたときから言われているひとつのことは、ボロニーズの寿命はだいたい14・5年、シングルコートで換毛期もなく、ぬいぐるみのように愛らしい容姿で、丈夫で大変飼いいやすい犬だと言われてきました。確かに、それは事実でありますが、他方、ボロニーズの健全性の実際について論じられることは少なかったと思います。
ボロニーズについて言えば、長命で飼いやすいからといって、その健全性において、「異常がない」とは言えません。
また、症状もなく、元気であるからといって、「健康」だとは言い切れず、ボロニーズであるかぎり、稀少犬ボロニーズが持つ健全性のリスクを持っていると考えて飼育することが、重要だと考えます。近い血統での交配が繰り返されていることによって、先天性疾患というリスクを常に抱えていることを、忘れてはならないのです。
その実際は多様性に満ち、個体差もあります。
はっきり言ってボロニーズは、検査をすればするほど、異常は必ず見つかると言っても過言ではないと思います。
何ら問題なく日常生活を送り、健康に見えても、飼い主が心配して検査をしたら、異常が見つかると言うことについても、賛否両論の意見が存在すると思います。先天性疾患や先天性異常を心配するがあまりに、麻酔をかけた検査や、開腹手術、身体に負担をかけて検査を行い、そこでも健康上のリスクを負わせ、その結果として先天性疾患や異常を見つけると言うこともあり得るのですが、はたしてそれがボロニーズにとって幸せなことなのかどうかということについては、議論が生じるところでしょう。
異常が見つかったからといって、それを正常に治すこと(例えば手術などで)がボロニーズにとって必ず良いことかと言えばそうではありません。
その処置をしたことによって、また新たな問題が生じ、命を落としてしまうという例も少なくないからです。
ボロニーズは日本では大変珍しい犬種であるため、動物病院の獣医師においても、その犬種についての知識を持つ獣医師が少なく、留学経験があり、豊かな海外経験を持つ一握りの獣医師が、そのような知識を持つという状況に止まっており、そこにも難しさがあるのです。そのような状況の中で、ボロニーズの飼い主としてどこまで日本の獣医療に信頼して良いのか、という課題もあるでしょう。
私どもの犬舎としての姿勢は、もちろんボロニーズについて、専門的な知識を持つ獣医師においての診察、診断は欠かせないことであり、必要なことでありましょう。しかし、ボロニーズの犬種的傾向を踏まえないでの原因追求は、かえってボロニーズを苦しめる結果に終わる可能性もあると言えると思っております。
まずは、ボロニーズについての知識を持つ獣医師と巡り会うことも大事でしょうし、また、飼い主がボロニーズの犬種的傾向をよく理解することが必要になってくると思います。
飼い主様が、どんなに元気で健康と言っておられるボロニーズでも、検査に検査を重ねていけば、稀少犬としての運命とも言える何らかの異常が見つかるでしょう。
このようなリスクを持っているボロニーズですが、それを超えて、まことに魅力的なすばらしい犬種です。そして、このようなリスクを持っていても、きちんと生活環境を整え、適切な給餌を行っていけば、そのようなリスクの発現を防ぎ、天寿を全うすることができると信じております。それだけに、リスクから目をそらすのではなく、何も問題が無い時から、リスクを心に留めて、最善を尽くして頂けたらばと思うのです。
具体的な症例と健康で気をつけたいこと
今までボロニーズの犬種的傾向ということでは、ボロニーズの弱い面や、かかりやすい病気などについて、日本で詳しく語られることはありませんでした。それはボロニーズという犬種が珍しく、日本でのブリーディングの歴史も浅く、この犬種について医学的、学問的に熟知する人が少なかったということと、そのような犬種であるために、獣医師などによる治療の蓄積や研究が進んでこなかったという事によるのでしょう。
日本にボロニーズが初めて輸入されてから一般的に言われてきたことは「ボロニーズは飼いやすくて丈夫だ」と言うことです。しかしそれはあるひとつの経験からの発言で医学的データーや根拠を持って言われてきたことではなかったように思います。 それぞれの経験による発言ということはもちろん重要なことであるでしょう。しかしそこに留まってしまうのではなく、きちんとした資料やデータに基づいた情報や考察は、ボロニーズを飼いたいと考えたときに知っておくと良いことだと思います。また、既に飼っておられる方も、このことを知った上で飼って下さることが大切なのではないかと思うのです。
ただ単に体臭が少なく、シングルコートで換毛も少なく丈夫で飼いやすいといったイメージだけではなく、ボロニーズの歴史的なブリーディングの背景や、犬種がたどってきた歴史的な背景を知り、その稀少犬であるがゆえに背負ってしまう健康上のリスクについても、根拠に基づいた仕方で知っておくべきなのではないかと考えるのです。
●目について
ボロニーズを紹介した海外の文献などに、注意すべき健康上のこととして、「目」という項目もあげられています。これは主に流涙症(涙やけ)のことをさしています。
流涙症は、角膜を覆う大切な涙が流れ出てしまう症状で、それによって、被毛の着色などが起こることを、涙やけと言ったりしています。
もともと、犬種的な傾向によって、目の形状の傾向から、この症状を発症しやすい犬種は、トイプードル、マルチーズ、シーズー、ヨークシャーテリアなどがあげられることが多いのですがボロニーズもこれらに含まれるといえるでしょう。
この症状が続くと、目そのものが、涙で覆われていないため、ドライアイのような症状が生じてしまったり、目の表面が傷つきやすくなってしまったり、ということが生じてしまう危険性があります。
主に原因としては、
1.給餌の問題(ボロニーズに良くないものを食べさせた事によって生じる。)
2.肝機能(内臓機能)の低下(消化分解できずに排出されない毒素が体の中に溜まりやすく、涙やけの症状となってあらわれる)
3.目そのものの問題
a.コートが長かったりして、その毛が目に入って目を刺激する場合。逆さまつげがあって、目を刺激する場合。そこに雑菌などがついて、症状を引き起こす。
b.涙管が詰まっていたり、そこに炎症が起こったりしていて、涙が流れ込んでいかないために、症状が引き起こされるという考え方。
c.目の形状的な問題(これはとてもデリケートな違いで、同じ親から生まれた子犬でも、ほんの少しの目の下部の形状の違いによって、涙やけが出る子と出ない子が生じたりする)によって、症状が生じるという考え方です。これは、涙を受け止めておいて、瞬きをした時に目全体に涙が行き渡るようにすべき所なのに、涙を受け止める場所が微妙に足りず、涙が流れ出てしまい、そこに涙やけが生じてしまうと考えるのです。この考え方に基づいて、内眼角形成術という手術で、涙やけが良くなる事もあります。(トライアングル眼科動物診療室の眼科の権威の斉藤先生が、この手術の第一人者で活躍されています。)
このように、涙やけについては、どのような原因で生じているのかということを突き止めて、その原因にふさわしい形で対応してあげられると回復への道が開かれます
●歯について
これまでボロニーズの歯については、重要な事としてあまり語られることがありませんでした。
噛み合わせや、歯並びなども、バイトを見るに止まっていました。奥歯まで歯の全体をくまなく診たり、噛み合わせや、歯の位置を診て適切な時期に適切な処置を施すことは、ボロニーズにとっては必須のことです。
私たちが21年間ボロニーズに携わってきた学びの中で、歯の萌出遅延(ほうしゅつちえん)について知りました。3ヶ月齢を過ぎて、生えてこない乳歯があれば、それは、きちんと診察を受け、処置したほうが良い、と学びました。
特にボロニーズは、元々小型犬であるだけでなく、近年のブリーディングにおいて、できるだけ大きすぎないで、スタンダード規格にあったボロニーズを生み出そうとする傾向が世界的にあります。FCIのスタンダードでは、体重が2.5~4kgとなっています。このスタンダードにあったボロニーズということを考える世界的傾向があります。このスタンダード規格スタンダード規格ボロニーズを生み出そうとすることが世界的傾向となっています。
このように小型化を目指して交配していくと、どうしても顎の大きさが問題が生じ、歯並び、歯の問題も生じやすくなってしまいます。
本当にボロニーズは、世界でも数が少ないなかでブリーディングが行われてきたため、また、スタンダードをこえる大きさになってしまったボロニーズを、もう一度スタンダード内に戻そうとする試みが繰り返されてきた中で、どうしても、歯や歯並びの問題が生じやすいと言えます。これは、これからのボロニーズのブリーディングの大切な課題といえるでしょう。
それ故ボロニーズは歯の問題をきちんとクリアするべく、歯の検診と、処置を行う必要があります。
歯の問題が見た目だけの問題でしたら、それほど気にすることもないかもしれません。しかし、それは健康にも関わる大問題で放置すると重篤な病気を発現する場合が多々ありますので、それは大切に手当てしてあげたいものです。
上記のように、スタンダードを目指す努力が重ねられています。その途上にあるため、稀少犬ボロニーズは、顎の大きさと歯の本数の関係がとても難しいとされ、歯科検診が重要な役割を果たしています。乳歯が遅く生えてしまうと、それだけ永久歯が生えることを妨げるため、きちんと適当な時期に乳歯が生えそろうということが大切です。そして、少しでも遅い傾向にあるところは、歯肉に少し傷をつけてあげたり、かなり遅い子の場合には、歯肉を切除してあげるという処置をすることが大切です。また、乳歯が正常に生えたら、今度は、適当な時期に抜けるということが大切で、乳歯がいつまでも抜けないでいると、永久歯が生えるのを妨げてしまうので、その時期が来たら、乳歯が抜けていることが大切です。そのため、その時期になっても乳歯が抜けないでいる場合には、抜いてあげる処置をすることが大切です。またすでに違う方向に生えかけている歯があれば、抜歯した自分の乳歯の一部を楔として挿入し矯正します。このように生後3ヶ月前後から、生後半年にかけて、歯の管理が私たち犬舎と、その間に譲渡が行われた場合には、オーナー様になられる方たちによって、その務めが担われることになります。私どもはボロニーズの場合は必須のこととして考え、必ず犬舎の推薦する病院で診察や処置を受けていただいております。
譲渡後については、生後6ヶ月頃までの永久歯に移行する時期にうまくいくように、乳歯からきちんと永久歯が抜け替わるように、乳歯がいつまでも抜けないでいないように、ケアをしてあげることが大切です。生後3ヶ月の検診から、生後5ヶ月~6ヶ月頃までに、検診を受け続けて、抜け替わる歯が上手くいっているかどうか、噛み合わせがうまくいっているかどうかを診て頂き、犬舎の推薦する病院によって、専門技術を必要とする処置を行うということが必要になります。このことは子犬の成長において見た目の問題ではなく健康上重要で必須のことです。この処置をしなかったために様々な病気が発現して顔が曲がってしまったり、顎の骨を削らなければならなくなって、顎を失ってしまったりした子もいます。また内臓疾患にまで至り重篤な病気を発現してしまった例もあります。とても健康上重要かつ必須のことですので、当犬舎では、お譲りするボロニーズの子犬たちは必ず犬舎が推薦する病院にてこの時期の検診処置を受けて頂くことを譲渡の条件としてお譲りさせて頂くにあたってのお約束とさせて頂いております。
●肝臓について
ボロニーズの犬種的傾向として、肝臓については、弱さを持っている可能性に特に注意し、症状が全くない健康な段階から、肝臓に負担をかけない生活を、食生活を中心に送ることが大切です。
ボロニーズでは、体の大きさに比べて肝臓が小さかったり、薄かったりということがあります。具体的には、門脈シャント、門脈低形成、微少血管異形成といった問題を持っているボロニーズが相当数あると思われます。しかし、このような問題を持っていても、肝臓に負担がかからない給餌をきちんと続けていて、大きな症状が現れなかったために、気づかれずに天寿を全うする場合も多くあります。また、食欲不振、体が大きくならない、食後に気分が悪くなって嘔吐してしまうなどの症状があって、血液検査などで、肝臓の機能が弱いということまでは解明されても、それが門脈シャントや門脈低形成などによるものであると確定診断をするまでに至らないことも多くあります。きちんと確定診断をするためには、全身麻酔で造影検査を行わなければならず、そこまでの検査は、ボロニーズの場合には検査をすることによって身体に負担がかかり別の病気を発現するリスクもあるため、通常あまり行いません。そのため、肝臓に問題を抱えていても、それが解明されないことの方が多いと言えます。
犬種的に肝臓が弱いのであれば、何も身体症状や血液検査に異常がなくても、きちんと造影検査などまで行って、万が一病気が見つかったら、早期発見で早く対処するということが大事だという考え方もあります。しかし、造影検査で見つかる小さな異常が、実際の健康上は問題を生じていない程度のものであれば、慎重に考えるべきです。検査や処置・手術などをすることがきっかけとなって別の弱さが発現してしまうと言うこともあるのです。ボロニーズという犬種的傾向を考えると、肝臓の弱さを抱えている可能性が大きいので、麻酔薬の投与やいろいろな薬剤の投与による肝臓への負担をより一層かけてしまうことなど、また新たな別な重篤な病気発現を促してしまうという可能性をも考えると、症状が出ていない、血液検査の(血液生化学検査19項目)結果異常がないのに麻酔が必要な検査をして早期発見を目指すべきなのかどうか、どちらが良いのかと言い切れないという面があるのです。病気や弱さがあるのであれば、それがどのようなものかを追求する事も大切ですが、それによって新たな問題を発現してしまう可能性もあるということをボロニーズの場合には必ず考慮に入れて考えるべきであると考えます。健康を維持していくために、どのような選択をしていくのが良いのか、その見極めが非常に大切なのです。
◎ボロニーズに多く見られると思われる肝臓の問題
○門脈シャント
背骨に沿って走る門脈を通って、本来、血液は肝臓に流れ込んで、そこで解毒されます。ところが、この門脈と別の血管(たとえば奇静脈)との間に、バイパスのように血管が繋がっており、そのため、解毒されないままの血液が再び体の中を巡ってしまうのが、門脈シャントです。このバイパスのように繋がっている血管をシャント血管と言います。このような血管は胎児の時には本来存在しているもので、成長に伴って消えていくはずの物です。それが消えずにずっと残ってしまうことがあるのです。
門脈シャントには、シャント血管がある場所によって、肝臓内門脈シャントと肝臓外門脈シャントがあります。シャントの治療は、手術でシャント血管を結んでしまうのですが、当然のことながら、肝臓外門脈シャントの方が圧倒的に手術がしやすいと言われています。
○門脈低形成(肝門脈微小血管異形成症)
門脈は肝臓の中に入って網の目のように広がっていきますが、この肝臓に張り巡らされていく門脈の形成が低く、十分でないことを門脈低形成と言います。そのために、肝細胞の成長が十分ではなく、血液が肝臓内を巡ることも十分でないため、門脈シャントの場合と同様に、十分に解毒をすることが出来ず、解毒しきれなかった血液が体内を巡ってしまうことになります。門脈シャントと違って、手術などの治療はできません。
◎肝臓をチェックするために必須である検査について
○リンパ球反応検査(除去食アレルゲン検査を含む)およびアレルゲン特異的Ige検査の必要性について
?.それぞれどのような検査なのか。
○リンパ球反応検査とは
血液からリンパ球と単球を採りだして、そこにいろいろなアレルゲンを混ぜて培養します。そのアレルゲンが、体が有害物質と判断するものであれば、リンパ球の活動が活性化します。問題ない物質であれば、リンパ球の活動は活性化しません。このリンパ球の反応を測定することで、その物質がその犬にとって有害物質であるかどうか、検査します。信頼度は大変高いのですが、費用は高額になります。
○アレルゲン特異的IgE検査
IgEというのは、血液中の抗体になるタンパク質(免疫グロブリンの一種)で、ヒスタミンとならんでアレルギー反応において大きな役割を担う分子です。血液中のIgEの量を調べることによって、アレルギーの有無や程度を調べるのがIgE検査です。IgE検査にはIgEの総量を調べて、どれだけアレルギーの状態になっているかを調べる非特異的IgE検査と、それぞれのアレルゲンに対応するIgEを調べる特異的IgE検査があります。
IgE検査の方が安価に検査を受けることができます。しかし、「食事の特異的IgEは、卵と牛乳、ピーナッツや小麦の一部タンパク質などを除いて、信頼性はあまり高くありません。つまり血液検査で反応しなくてもある物質にアレルギーがあることはありえるし、反応してもアレルギーがあることの絶対的な証拠にはなりません。血液検査で反応しても、アレルギーを起こさない人はたくさんいます。これは診断をする上であくまでも参考指標になるということであって、確定診断には使用できないということです。」と明記されており、この検査だけでアレルゲンを判断することは難しいと言えます。
?.どうしてこの検査をする必要があるのか
◎一般的に考えられる必要性
一般的には、獣医師からこれらの検査を薦められるのは、皮膚症状をはじめとしたアレルギー疾患と思われる症状があり、その原因を確認し治療していくためにでしょう。
◎ボロニーズにとっての必要性
しかし、アレルギー疾患が出てしまう前に、これらの検査をきちんとしておくことの必要性を強く感じ、エルピス犬舎から送り出した子犬については、一歳のお誕生日を過ぎましたら検査していただけますようにお願いをしています。
その犬にとっての有毒物質(有毒物質というと特別な毒を持った物のように響きますが、ある犬にとっては鶏肉が、別の犬にとってはサーモンが、など他の犬にとっては大切な栄養源である物が、ある犬にとっては有毒物質となってしまいます)が体内に入ってきたとき、それを分解し体外に排出する働きを主にするのは肝臓(腎臓とともに)です。肝臓で有害物質が分解しきれないと、体内に有害物質が居座ってしまい、過大な免疫反応が起こってしまいます。その免疫反応の負担が大きすぎるとアレルギー反応が生じると言えます。ですから、アレルギー反応(アレルギー疾患)がでていなくても、その犬にとっての有害物質を体内に入れることは、肝臓に大きな負担をかけることになります。犬種的傾向として、肝臓に弱さが出やすいボロニーズにとっては、アレルギー疾患の有無にかかわらず、その子にとっての有害物質がなんであるかを検査であらかじめ知り、それを除去した給餌をすることによって、肝臓に負担をかけないようにしてあげることを第一に大切にしてあげたいと思うのです。そして、その結果としてアレルギー症状がでることもできるだけ防いであげられたらばと考えています。肝臓などが強い犬種であれば、給餌についても、いろいろな食べ物を与えてみて、アレルギー症状が見られなければ、この食べ物は平気なのであろうと予測するという方法でも良いのかもしれません。しかし、先に記したように、肝臓が頑張って分解解毒してくれたおかげでアレルギー症状が出ていないだけで、それだけ肝臓に負担をかけているという危険性があります。ですから、あらかじめリンパ球反応検査、アレルゲン特異的Ige検査をしておき、その検査結果に基づいて給餌を行っていくことが必要だと考えております。肝臓に弱さが表れる危険性があっても、最初から、肝臓に負担がかからないように注意して給餌をしき、肝臓の弱さが表れずに生涯を全うすることができれば、それが最も良い形だと思うのです。
◎血液検査でアンモニア検査(NH3)を行う必要性について
1.血液中のアンモニアの値を調べる意味
犬も人間も、食べ物を食べ、食べ物の中のタンパク質が分解吸収されます。腸がタンパク質を分解するときに、アンモニアが作られます。このアンモニアは動物にとっては有害な物質です。このアンモニアが肝臓の働きによって尿素に変えられ、尿の中に排泄されます。こうして、体から有毒なアンモニアが排出されるのです。ところが、肝臓が十分アンモニアを処理することができないと、血液中にアンモニアが一定量以上に残ってしまうことになります。このアンモニアの量があまり増えていくと、肝性脳症のように、脳や神経に異常を生じることになります。
この肝臓によるアンモニアの代謝という解毒作用が、きちんとできているのかどうかを、血液検査で確認していただきたいのです。
2.アンモニア値に異常が見られたとき
肝臓に問題があるのではないかと予想されるようなアンモニアの数値であった場合には、TBA検査を受けます。実は、肝臓に問題があると言うときに、そこには二つのタイプがあるのです。ひとつは肝臓そのものやその周辺の血管に(形状的に)問題がある場合です。門脈シャントや門脈低形成などがありますが、本来消えてなくなるはずの血管が残っていたり、肝臓内の小さな血管が正常の形でない場合などがあります。もう一つは、形状には問題がなく、働き(機能)に問題が生じる場合です。実際にその子の肝臓の問題が、どちらのタイプであり、どの程度の問題なのか知るための検査のひとつがTBA(総胆汁酸)の検査です。
◎TBA(総胆汁酸)検査
肝臓でつくられた胆汁酸は、胆汁として胆嚢に入り、脂肪の消化吸収を助けますが、その後、腸管から再吸収され、門脈を通り肝臓に戻ります。これを腸肝循環と言います。そして、通常体内を循環する血液中には胆汁酸は微量しか含まれませんが、門脈シャントなど、形状的な問題があったり、あるいは肝炎や肝硬変などがある場合には、この値が上昇します。肝炎や肝硬変の可能性がなく、それでも胆汁酸の値が高い場合には、どこかにシャント血管が残っているなど、形状的な問題が肝臓にあると予測することができるのです。そして、その値によって、だいたい手術が必要なほど大きなシャント血管がありそうなのか、あるいは、門脈低形成あるいは微小血管異形成くらいであるのか、見当をつけることができると言うことなのです。
☆最初に記しましたように、肝臓の状態を詳しく調べるためには、全身麻酔での、肝生検及び、CT造影検査などを必要とし、簡単に検査を受けるということはできません。むしろ、ボロニーズは肝臓に弱さが出やすいこと、問題が潜んでいる可能性があることを十分承知して、肝臓がどのような状態でも負担がかからないような給餌を大切にしていくことが必要だと思っています。そのようにして、潜んでいた弱さが発現しないということが、十分に可能性があると思うのです。逆に言うと、肝臓のことを意識しない自己流のめちゃくちゃな給餌をして、肝臓の弱さが前面に出てきてしまうと言うこともあるのです。私どもとしては、個々の状態に併せて、必要な時には適切な医療、検査、処置を受けながら、ボロニーズの肝臓に負担をかけない給餌でボロニーズの弱さをある程度克服してゆくことができ、天寿を全うすることができると信じております。